ビデオ撮影お願いします
10年程前、私がやってる零細会社にお訪ねの電話があった。
「あのぉ、友達の友達から聞いたのですが、社長さんはビデオ撮影を有料でやっていただけると聞きまして、お電話させてもらっています」と....
声からすると40代の女性だと思う方からだった。
私は自分の記録をするのが好きだから、20年前に8mmビデオムービーが出たと同時に購入し、自分1人でカラオケBOXに行き歌声を撮影したりと色々なものを自分中心に撮影してきた実績を持つ。
お影でビデオ撮影はそこそこ上手く、お客様から電話があった時には映像編集機材、PCMビデオデッキ、Hi8ビデオデッキ、3CCD-Hi8ビデオカメラ、照明機材などを含め総額50万円以上かけているマニアだった。(ひつこいようだが自分中心にしか撮らないのだ)
それは、このようにイラストにもなっているのでだった。
脱線してしまったので話を戻さなければいけない... スマン
そんなお尋ねがあり「友達の友達とは誰ですか?」と聞いたが「友達の友達です」としか言われなく、私の方も「訳ありの仕事だな」と直感したのでそれ以上は聞かず、数日後にお客様宅へと打ち合わせに行くことにした。
福岡市内にある豪華なマンションへ到着。とくに表札も出てないので少し怪しいとは思いながらも、ピンポーンとインターホンを鳴らすと30代の男性が出てきてドアが開いた。
ホンゲェ~~!!!
その男性は、インドの修行僧が着ているような布1枚を肩から掛けて「ようこそおいでくださいました。先生は今から参ります」と別室に通された。
思ったとおり、やっぱりこんな感じじゃ~!
部屋には、仏陀らしき絵、テーブルにはパワーストーンっていうのか、丸く光ってる玉が置いてあるのだ!
私は思った、ビデオ撮影だけなら弟子だと思うこの男性らが撮影すりゃいいものを、有料で他人に仕事で頼むってことは、十中八九、危ない”宗教的儀式を隠密で撮影”せないかんと直感した。
逃げ出したい気持ちはあったが、話だけでも聞いてから逃げても遅くないかと思い直し先生を待つことにした。
10分程して先生が現れた。
案の定、ラメ入り風の衣装でお出まし!
こんにちはと挨拶し名刺を差し出した。声からして電話をかけてきた本人だった。
先生は、仏陀らしき絵についてパワーストーンについての説明がなされ「あなたは素晴らしい波長の持ち主です。あなたならこの部屋に入って分かったと思いますがパワーを感じていますよね」と、かなり強引に「そうですね」と言わなければいけない波長を頂くのである。
(先生の話は長いので中略)
しばらく自然エネルギーのパワーやらが続いたが、私も次第に嫌気がさしてきたので、ズバリ「撮影する仕事の内容を聞かせて頂けませんでしょうか!」とハッキリ言った。
すると先生は、まず私に尋ねてきた。
UFOが作るミステリーサークルってご存じですよね?
出たぁぁぁぁぁ~~~
嫌な予感はしていたが、やっぱりこげな系統やんけぇぇぇ~
もしかして、私にミステリーサークルを撮影してこいとでも言うのか・・・
ぎゃぁ~
この私が不覚にも数秒固まってしまった。
しかし、ミステリーサークルは一応知っているので「はい、ミステリーサークルは知ってます」と返事した。
先生は「おたくに撮影して頂きたいのは、昨年イギリスの麦畑でUFOがミステリーサークルを作っているところの録画に成功しまして、その貴重な映像を福岡市博多区の◯◯ホールで、1カ月後に研究家のパンタ笛吹さんが発表します。その発表(講演1時間)の一部始終を記録して欲しいのです」
助かったぁ~!
最悪イギリスまで行って、その貴重な映像を隠し撮りしてこいってのかと思ったわ。(汗)
しかし、研究家のパンタ笛吹?
なんじゃその名前は?????
私の頭の中には当然、コレが浮ぶのであった・・・・
まさか....そんな奴はおらんやろ~ (・_・;)
パンタ笛吹氏の名前は謎なんだが、私もUFOやミステリーサークルには関心があって、子供の頃には矢追純一氏のUFO番組を食入るように観ていたし、その貴重な映像を観れるんだったら全てにワクワクするじゃないか!
とても興味深いし、1時間の撮影なら容易いことだ。
私は気分で仕事をするもので、期待を込めて1時間あたり15,000円、編集なし、講演終了時にマスターテープ2本渡しってことで契約が成立した。
それから1カ月後の日曜日夕方、バイトを連れて時間より早く撮影機材を持って会場へ行くと、先生やお弟子さん数十人が居てパンタ笛吹さんと思われる方と話していた。
私は、とりあえず先生やお弟子さんにご挨拶する。
すると先生「パンタさん、パンタさん、今日のために撮影してくてる強力な助っ人で、すごく興味がある方なんですよ」と、わざわざパンタさんに紹介してくれるもんだから、名刺交換した上、UFOについて雑談しなきゃいけなくなった私。オイオイ...
しばらく話していたが、機材のセッティングがあるからと抜け出し、ホールの中央で電源確保し三脚立てカメラ設置、モニター入れビデオデッキ確認し、ベッドホンで音声確認し準備万端。
30分くらいすると、UFOやミステリーサークルに興味がある人が続々入場してくる。
あっという間に数百人以上入る会場は満員になった。
スゲェ~!
入場料は幾らか知らないが、貴重な映像を観る為にこれほどの人が集まるのか!
話し声は博多弁以外に、熊本弁や鹿児島弁、また関西弁まで聞こえてくる。こりゃ西日本全域から集まっとりますわ!
それほど衝撃的なミステリーサークルの映像なのか!
私は、まもなくスクリーンに映し出される映像に胸がときめくのであった。
会場が徐々に暗くなった。いよいよ始まるぞ、、、●REC
パンタ笛吹さん登場で会場から大きな拍手!!
まず、自ら自己紹介するパンタ笛吹さん、経歴はよく覚えていないが、昔しニューヨークの寿司屋で働いている時に、クイズ番組「なるほどザ・ワールド」に出演していた映像や、若かりし頃の自分の映像が流れた。
私はヘッドホンとモニターを観ながら思った、この人も自分好きなのか....!
へぇ~(笑)
そして、パンタ笛吹さんは突然”オカリナ”を吹き始めた。
ハァ?
ここで初めてわかった。パンタ笛吹の「笛吹とはオカリナ」のことだったんだ!
ミステリーサークルとオカリナがどのような関係があるか知らないけど、まぁいいんじゃないの?
(その演奏はしばらく続くのであった.....中略)
そして中盤になり、いよいよ本題のUFOがミステリーサークルを作り出すところをお見せするとのことで場内が暗くなり、正面の大きなスクリーンに映し出すことになった。
いよいよ始まるぞ!
映像がでた....
麦畑の上空20mくらいのところを、10mほどの小型UFOがグルリと旋回すると、麦が倒れ始めて円形の形が現れてきたではないか!
ちゃんとUFOが作っている決定的証拠ではないか。こいつは凄いぞ!
映像は15秒程しかなかったが私はかなり興奮した。
場内からも「これはすごい」との声が聞こえてきた。
15秒程であったが、この仕事引き受けて良かったぁ~と本気で思えた。
会場は明るくなり、パンタさんは「どうですか・・・」と観客に自信満々に喋る。
これだけの証拠映像見せられたら何も言えません。
私はUFOがミステリーサークルを作っていることを信じます!
パンタさんはしばらく喋り、パンタさんと会場に来ている人(私も含む)の、信じる心が一つになったところで、会場をまた暗くし、宇宙と交信するする為に目をつぶり"ヒーリング"を行うのであった。
私は仕事で来ているんだが、真面目にヒーリングを行っていたのである。
パンタさんの話も終わり、会場から割れんばかりの拍手が巻き起こりパンタさんは壇上から去っていった。
カッコイイ!
パンタ笛吹さん最高!
私は仕事を忘れて、大きな拍手をしていた。
あっ、ヤベェ~ ■STOP ■STOP ■STOP
よかった、よかった、最高やったね!
すると、私の依頼者こと先生が壇上に上がりこう行った。
「今回、パンタ笛吹さんの講演ビデオを撮影していますので、この貴重なビデオが欲しい方は会場入り口で受付けしますので、予約して帰ってください。よろしくお願いします」
「尚、収録ビデオは1本 5,000円で販売させていただきます」
この言葉にウケたのは私だ!
あのさ、1時間で済んだから私の撮影ギャラ...15,000円じゃん。
なんと3本で元がとれるやんけ。チクショー安すぎたぁ~!
でも、仕事は仕事だ。トホホ
機材を片付けて、会場入り口に行くと”ビデオ購入者がズラリと並ぶ光景”を目にした。
貴重な映像も観れたし良しとするか...... (^。^↓↓)
先生にマスターテープを渡しギャラを受け取ってこの仕事は終わった。
めちゃめちゃ楽しかったぁ~
それから、4~5年後・・・・
ある日、新聞のテレビ欄をみていたら全国放送で「ミステリーサークルを解明」ってな題名だったと思うが、スペシャルとして2時間番組が放送されることを知った。
出演者にあのパンタ笛吹さんの名前もあった。
これは絶対に見逃せないと、その日は仕事を早めに切り上げ夕食も終わらせ、ワクワクしながら午後7時を待っていた。
番組が始まった。
すると、パンタ笛吹さんはハッキリ言った。
ミステリーサークルは人が作り出してます
こんなのも
こんなのも
全て、人が簡単に作り出せるんです。
今からその証拠となる映像をお見せしましょう・・・・
おや?おや?
4~5年後には、まったく違うことを言い出したぞ???
あの時に言っていたことは嘘か?
私はパンタ ホラ吹きやんけ!
っとテレビにツッこんでしまった。
番組を観ていくと、パンタさんが見つけてきたイギリスの麦畑でミステリーサークルを作っていたと豪語する若者数人がモザイク使用で出てきて、私達が作ってきたという証拠に高度なミステリーサークルを作ると言うのだ。
番組は、オーストラリアの麦畑を使い深夜に若者数人がミステリーサークルを作る様子を暗視カメラで撮影するお金をかけたプロジェクトが始まった。
若者らは外部に光が漏れないように、LEDライトで図面をみながら、あっという間に高度なミステリーサークルを作ってしまった。(本当に高度だった)
そしてパンタさん「どうですか・・・」と自信満々に語る。
私はテレビを観ながらドッヒャ~っとコケましたよ!
じゃ~、数年前のUFOが作っていたとされる映像はどうなるん?とテレビに出ているパンタさんにツッコんでいたら、しばらくして、私が会場で観たものと同じ映像が流れた。
そうそう数年前に私が観たのはこの映像や!
するとパンタさんはこう言った。
「この映像は、偽物でコンピュータグラフィック(CG)で作られてまして、こんなの簡単に作りだせますよ」と、パソコンのペイントソフトを使って、アホのように簡単に同じ映像を作り出してしまった。
言葉がありません。
そして、検証は続きミステリーサークルは人間がイタズラで作っていると締めくくって終了した。
とても疲れた.....
パンタ笛吹さんも当時は信じていたのだろうから、それはそれで正直いいし、現在もミステリーサークルや宇宙、超能力等の解明をし活躍しているから頑張って欲しいと思います。(期待しています)
私もドキドキ・ワクワクして楽しんだのだから....とスッキリした気持ちでです。
ホントかよ.... (^_^;)
監修・解説:
パンタ笛吹 ¥2,100(税込) その他に多数の本を出しています。
そのテレビから、さらに1年後のことだった。(まだ話は終わらない)
福岡市内のとある現場の完成落成式で業者として出席していた私。
お酒も飲めず、ウィスキーを真似て作ったウーロン茶入りのグラスを片手にウロウロしていると、私にビデオ撮影を依頼してきた先生のお弟子さんにバッタリ会った。
私は顔を覚えていたし、お弟子さんも私の顔を覚えていた。ドキッ!
「あぁ、どうもどうもこんにちは。あの時はお世話になりました」と挨拶すると、「いや、どうもこんにちは」と普通に返してくれたので共通の話題をせねばと思い。
「ミステリーサークルは人工だったとパンタさんが言ってたテレビ観ましたか?」
と質問してみた。
すると、お弟子さんは急に表情が険しくなり、(-_-#)"
「はい、はい」とだけ言って私の前から去って行った。
う~~~~~
私はこの時はじめて真実を知った。
先生を含めた、あの団体はいったい何のサークルだったんだ???
これこそミステリーなサークルではないか。とね....
ははははは!
すべて事実であり、真実でなければこの話は面白くない。
【余談】もしやと思い、私が撮影したビデオテープをネットで検索してみると数件ひっかかりちゃんとネット販売もされていました。私が撮影したのとは別物?かもしれませんが収録ビデオの内容を読むと同じものです。欲しい人は買ってみてはいかがでしょう。もしかしたら私の声「おぉーすげぇー」が入っているかも。(マジ)
「摩訶不思議」は、昔し昔しの話しである。