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日常の喜怒哀楽を写真付きで綴るエッセイ

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隠しカメラをつける女

私の会社では業務内容の一つとして防犯設備も取り扱っている。

何故、防犯設備の仕事をするようになったかと言うと、今は誰もが認める?真面目な私でもガキの頃には悪さをしていたもんだから、そのノウハウを生かして悪い奴(侵入者)が入って来ないように対策をこうじる、世の為、人の為に貢献している仕事と言えよう。(どこか変だか、気にするでない、ツッコミ不要)

ときれいごとはいいけど、そんな仕事をしていると恐ろしい目に会うことがある。

普通、防犯対策で恐ろしい目と聞くと、多分「ヤクザ事務所の設備」と考えるかも知れないけど、ヤクザさんはちゃんとすれば我々と同じ普通の人だから別に恐ろしくはないし、最初っから防犯って目的がハッキリしているので話は早い。

<さて本文>

ある日のこと、オネェちゃんらしき若い女性の声で電話が入った。

「あの、ビデオカメラの調子が悪いので見に来てもらえませんか?」と訪ねられたが、私はそんな精密機械のことまで診ている暇も無いので「メーカーさんへ直接持って行ってください」と丁寧に断った。

しかし「メーカーさんへは持って行けないし、いろいろと相談したいこともあるので現在の状況を見に来てくれませんか。無理だったとしてもお金はお支払いします」とひつこく言うもんだから話し方が怪しく普通の人じゃないと直感したけど、まあ~金貰えるならええかと思い(私は現金な奴なんだ)車を30分走らせ福岡市郊外の現場まで行ってみることにした。

そこは8階建ての新築マンションで、有名メーカーが建てた大規模マンションだった。

私の経験上「なんか怪しい客かも?」と思った場合、まず郵便受けを確認する。

郵便物を見るのではなく、1階にある郵便受けに名前が書かれているか?

そして名前があった場合、手書きなのか?活字で印刷してあるか?

(判断材料の一つではあるが、その理由は経験上とだけ書いておこう)

新築~5年以内に建ったマンションで家族住居型ならば自慢したいし、お客が来ることもあるので、普通の人ならばほぼ100%で郵便受けには名前がある。

だが、お客様の郵便受けは、私が想像どおり名前も無かった。やっぱり....

こういった場合、前話にも書いていたが、怪しいと直感した時には「今からお客様宅へ入るので、終わったらまた電話する」と事務所へ電話しておくことが保険になる。

玄関前に行ってピンポーン♪

出て来たお客様は、30代中ばの女性だった。

家に入ると、18畳はあるリビングには奇麗な家具やソファーが並んでいて生活は豊かに感じた。

私は早速、お客様にどのような状況なんでしょうか?と訪ねると「まず座ってお話しをしましょう、お茶を入れますから......」と言う。

こういった場合、経験上最悪な状況がまっているのだった。

お茶が出てきて、お客様は私生活の話を始めたが、長いので省略して本題の話し

お客様のご要望とは、

「リビングにですね、カメラを取り付けてくれませんか?」

「小型カメラ、ビデオデッキ、カウンターは買い揃えていますので設置して欲しいんです」

「カメラも配線も絶対に見つからないように設置してください」

「リビングが一望できて録画できないと意味がないです」

「お願いします」

ドヒャァ~~~

やっぱりそのような話しじゃ~

省略しすぎたが、このお客様は私生活の話の中で「独身」「恋人なし」「友達なし」「誰も遊びに来ない」「人を家に入れない」ってな事を自分で言っていた。

一人暮らしなんで自分を録画しても意味が無いのである!

それなのに、どうしてリビングが一望でるカメラで録画する設備が必要なんじゃ~???????

さっぱり意味解らん。摩訶不思議じゃ!

私は仕事柄お客様に、どうして?なんて聞くことは無いが、この場合摩訶不思議なので聞いてみた。

「あのぉ~、何を録画されるのですか?」と.....

するとお客様は「言えません、しかし私じゃ無い事は確かです」とキッパリ!

「・・・・・・・・・」

誰がどう考えても、こればっかりは防犯対策ではないことが明らかなのだ。

摩訶不思議と言うより、このお客様はとても恐い!

そして私が「隠しカメラは....」と言うと「隠しカメラじゃないでしょ、隠すなんて言わんどってよ!」と怒鳴られた!

ヒェェェェ~えじいぃ~

私は????ながら、これも仕事だと割り切り「では受けましょう」と言うと、お客様は大きなダンボールを持ってきて、この中に部品がありますので見て下さいと渡した。

ダンボールには、確かにすべて新品の超小型のピンホールカメラ、ビデオデッキ、カウンター、配線各種が入っており設置に必要な部品はすべて揃っていいたのだが、なんか変なものが機材に書いて貼ってあるのだった。

それでは、変なものってのをお見せしましょう。

動作チェックをしている時に撮影した。

まじ写真。

死にます

(下は長時間録画専用ビデオデッキ、上の黒い箱はカウンターである)

1、悪魔と思われる顔が書いてある。

2、名前がハッキリ書いて貼ってある。

3、直接油性ペンで、呪文が書いてある。(当然非公開だ)

絶対に普通じゃない!

お客様の正面(1m以内)でこれを見せられた私は、危ない人には慣れているとはいえ、さすがに恐ろしかった。

私はビビリながらも動作チェック、正常に動いていたので早速設置場所を提案した。

リビングが一望でる場所となると、リビングの端(上の隅)から撮影しなけれはいけないが、配線が見えないように、また録画機器を設置するとなると、一つしか残されていない。

カメラの設置場所はエアコンである。

つまり、このように設置すればいいのだ。

防犯カメラ設置例

私の提案にお客様は納得し、後日機材を持って私は再びこの部屋を訪れた。

この日のお客様はまったく喋らず不機嫌そうだった。

私は早速作業を開始するが、お客様は脚立に立っている私の後ろに無言で何度も近寄るもんだから、それが恐くて恐くて....

殺されるかもしれん、後ろに立つんじゃない!

そんな緊張感を持ちながらエアコンの室内機を少し加工し、一度外して配線をちょちょいと出してやって完成した。

完璧な仕上がりだ!

これなら誰にもわからん!

(えぇ? 誰にわからんの? とツッこまれても私にもわからん)

設置作業も終わり、10分間動作チェックをし録画された映像を確認したら、お客様は機嫌がよくなり、じゃお茶入れますねとテーブルに私を座らせ話しだした。

「この前、何を録画するかと聞かれましたが、実は何も映らなければ、それでいいのです」

「・・・・・・・・・・」

いちおう「あっそうですか」とし返事のしようが無いのだ!

その他いろいろ話したが、私の頭が混乱してしまうので書くのを省略する。ごめん

私は料金を頂いて、そそくさ帰った。

それから1週間後「何も映らないのでよかった」とのお礼の電話があり「あぁそれは良かったでですね」と返事していた。

またそれから1週間後、 またそれから1週間後、 またそれから1週間後、.......

電話は定期的に続いた。

2~3カ月も話していると、私も次第に悪い人ではないと思うようになり、電話で世間話しなんてするようになっていった。(俗にマインドコントロールと言うのか? そもそも私も変だからか?)

設置作業して3カ月ほど経ち、やっと電話もなくなった私はこのお客様のことはすっかり忘れて日々労働していた。

それから約2年半後、電話がかかって来た。

「あの~昔しカメラを取り付けてもらった◯◯ですが」

「どうもこんにちは、覚えていますよ、どうされました?」

「あのぉ~引っ越ししたので、新たに付けてもらいたいんですが」

一瞬迷ったが前回の作業では報酬も良かったので

「はい、いいですよ」

「では、またお願いします」

「それでは、新しい住所をお聞かせください」

「はい、福岡市南区◯◯◯◯丁目◯◯ー◯◯、◯◯◯◯マンション◯◯◯」

その住所って.........

私の会社の玄関開けたら横に見えるとるマンションやんか!

歩いて2分もかからん距離じゃ~!

ドヒャァァァァッァァ~

ヒェェェェェェェェェ~

私は思わず言った「うちの事務所の横あたりですよ~ね~????」

すると、お客様はこう言った。

キャァ~!

それは牧師さん、神父さん、住職さんにお願いしたいよぉ~

何故、私じゃなきゃダメなんだぁ~

だずげでぇ~ ゚ロ゚!l|

私は、その言葉を聞いて断わろうとも思ったが、こんな近くで「呪文」を唱えられたら「こりゃたまらんばい」と考え、断るに断れず、また隠しカメラ、いや違った「ただのカメラ」を取り付けに行き、いろんな相談ごとを聞いてあげるのだった。

再度書くが、相談事とは私の頭が混乱するので書けないし言えないのだ。

お客様は独身で一人暮らしで美人、金持ち無職で優雅な生活に見えるが、見えない何かと戦っている。

隠しカメラが何故必要なのか、それは未だ解明できていない

摩訶不思議を超えて、私は今だに恐い。

「摩訶不思議」は、昔し昔しの話しである。

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