■大人の全力疾走

 

先々月のこと、福岡市南区の西鉄大橋駅を車で通りかかった時、一人のオッサン(作業員風男性45歳くらい)が、一生懸命走っていた。

よく見たら、その男性の後ろをヤクザさんと思われる風体2人が必至に追っかけている光景だった。

おぉ〜!これは債権がらみやな! っと瞬間的に思った。

街中で”大人が全力疾走している姿”ってのは見ているように思えるけど、それは刑事ドラマ、トレンディードラマ、洋画、極道映画で見ているだけで、実際に全力疾走している大人はめったにお目にかかれない。

結局、オッサンらは角を曲がっていったので捕まったかどうかは不明なんだけど、私の経験上最終的には捕まるから無駄なことしてヤクザさんの逆鱗(げきりん)に触れない方が懸命である。

オッサン御愁傷さん。達者で暮らせよ〜

なむぅ〜 ぎゃはははは....

そんなこんなで、全力疾走しているオッサンの姿を見たら、以前、私も死にもの狂いで走ったことを思い出したから、その時のエピソードを記録しておこうと思う。

私は学生時代「瞬発力のたつ」と異名を持つ男で、警官に走って追いかけられても捕まったことは一度もないのが自慢だった。それが大人になって全力疾走することになるとは.....


【ここからが本文なのだ】

 

それは私が22歳の頃、昼間に福岡市中央区渡辺通1丁目交差点の横断歩道を歩いていると、1台の白いベンツが先を急いでいるのか、私の左からクラクション鳴らして「どけ」って態度でやってきた。

 

 

白いベンツにスモークガラスヤクザさんってのは瞬間的にわかったけど、

ヤクザでも横断歩道を歩いている私にクラクション鳴らすとは、 その態度が気に入らねえ!

 

これはいっちょ”懲らしめてやらんといかん”と思い。

私はベンツが通り過ぎる際、ジャンピングして助手席のドアを蹴ってしまった。

ボコッと音をたててドアは凹んだ。

どげんや、正義の力を思い知ったか! っとは思ったのは0.5秒。

ベンツは止まり、中から恐い方々が降りてきた。

(私はもろ血の気が引いてしまったことは言うまでもない)

ギョェェェ〜 またいらんことやってもうた!

すると一人のヤクザさんが、凹んだドアを見て「キサ〜ン、ブッ殺しちゃる」と怒鳴った。

・・・・・・・・・・ ヤベェ〜

 

慌てた私が唯一考えたことは、瞬発力を生かして走って逃げることだった!

 

 

よし行くぞ! (ターボ全開)

ドドドドド・・・・っと全快で逃げる私。

大声で怒鳴りながら4人のヤクザさんが追ってくる。

まさに極道映画そのままじゃ!

ひぇぇぇぇ〜恐い〜  誰か・だ・じ・げ・で・ぇ〜

 

 

「待たんか、コラァ、オラァァ〜」と後方で聞こえるが、捕まったら半殺しは確実で、その後もタダじゃ済まんのはわかっているだけに、「待たんかコラァ」と言われてもこちらも事情が事情だけに待ってはいられない。

そこで私は、片道5車線ある道路を時速50Kmで走る車を避けながら逃げていく。
(ハリウッド映画の刑事さんそのままじゃ)

素晴らしい瞬発力を見せるワシ。
国体に出場したら優勝するに違いない誰にも負けん猛烈なスピード!

ドドドドドドドドド・・・・・

後ろをチラッと見ると、200m後に4人が3人になり、300mで3人が2人になり、500mで2人が1人となり、最後の1人の「待たんかコラァ」も聞こえなくなっていた。

幸い、大丸の後ろには福岡中央警察署があるから、最悪そこまで走ればラクビーで言うとこの「トライ」であり、逃げ切り成功なのである。

しかし、天神駅前まで来た時、誰も追ってくる気配も無いから「よっしゃ、逃げ切り成功じゃ」と確信した私は、疲れ果ててタクシーを止めて乗り込むことにした。

正義は走っても勝つ! はっはっはっは!

 

そして、タクシーのドアが締まり料金メーターを倒して30m程走った時!

タクシーは急ブレーキ。

キィィィィー!

急ブレーキの原因に私は目が点になってしまった!

なんと! タクシーの正面にさっきのヤクザさん(一人)が立ちはだかっていたのだ!

ヤクザさんは追跡を諦めず、気付かれないよう私を追っていたのじゃ〜 

 

ヤクザさんは言った。

「こらぁ〜!! 降りてこんかこのクソガキャァ」

(イメージ:哀川翔さん)

 

 ゚ロ゚!l| こえぇェェェェェ〜

ど・ど・どげんしよぉ〜

これはヤバイと思った私は、タクシーの運転手にこう言った。

いいけん引け! 引いてしまえ!(めちゃくちゃ言うな)


慌てたタクシーの運転手は、泣きそうな声で私に言うのだ。

「おぎゃぐうざぁぁん、お金はいりませんから降りてぐだぁじゃぁぁい」

そしたら、タクシーの運転手が勝手にドア開けるもんだから、ヤクザさんは後部ドアに来て、胸ぐらつかまれて引きずり降ろされてしまった。

 

生涯初めて捕獲された瞬間だった。

それもヤクザさんだ。 もろ恐えぇぇ〜 

私は死を覚悟した.......

 

イメージ


ところがだ。
私はこのようなトラブルに対処する力をガキの頃から地域で身につけている。
(どこの育ちじゃ?)

それは、心の底から真剣に謝るに限るのだ! (たつの最終兵器)

「大切なお車を蹴ってしまい、本当にすいません」
「クラクションでカッとなってしまい、つい蹴りました」

ヤクザさん(約40歳)は、恐ろしい形相で「キサマ、事務所来い」といい腕を捕まれながら、事務所方面へ歩いて2人で向かうのだった。

ヤクザさんは、歩きながら

「兄ちゃん、よか度胸しとるやないや、ヤクザの車と知っとって蹴ったとや?」と脅すような恐い声で聞く。
私は正直に言う「はい、ヤクザ車と思いましたが蹴りました。すいません」.....

(心からひたすら謝る私)

お前、逃げ足早いやないや!
はい、殺されると思って精一杯走りました。
俺も足は速いばってん、お前は速いやんか。
はい、学生時代には瞬発力のたつと呼ばれていました。
お前はどこの出身や! 何ものや! ええ度胸しとる!
お前の職業、両親の職業は! etc.....

そんな話を歩きながらしていたら、これが不思議と次第に打ち解けていくのであった。

事務所に付くまでには、すっかり仲直りし笑い話のようになっていた。

これぞ自称:たつっあぁんマジックである(今考えればの話だが)

 

事務所近辺では、他の3人が待っていて「キサン、たいがいにせえよ」と取り囲まれたが、私を捕まえたSさんは「こいつは許そうと思っとる」と言ってくれたもんだから、他の3人は「Sの車やけん、よかならよかたい」と言い、一発も殴られず勘弁してもらった。

心やさしいSさんとは、それからしばらく話していたけど、まじ仲良くなってしまい、事務所の方々は「おはぎ」が好きだって言うから、後日「おはぎ」持って詫びを入れにくることで一旦解放してもらった。

助かった!

それも無キズとは.... まさに奇跡の生還である!

(テレビ番組:九死に一生スペシャルで使ってくれ〜)

 

 

後日、おはぎを持ってヤクザ事務所を訪れる私。

 (イメージ)サザエのおはぎ

皆様におはぎを配り円満解決、ヤクザさん全員と顔見知りとなる。

Sさんは言う「うちで働かんか?、金儲けして出世できるぞ」と.....

「いや〜勘弁してください」と断るが事務所の方々も歓迎しているし、「しばらく考えさせて下さい」と誤魔化しながら事務所でいろんな笑い話をしたのち家に帰った。

それから1週間程たった頃、断るなら断るでSさんに返事しないと礼儀に厳しい世界。

 

よ〜し、明日こそ断わりに行こうと思っていた。
そして、たまたま夕方6時のローカルテレビニュースを観ていたら、事件のニュースがこんな感じで読まれていた。

「麻薬取り締まり法違反で逮捕されたのは、福岡市.....組.....のS、調べによりますとSは.....」

んん? 聞いたことある名前やけど、もしやSさんのことか?

っと思った瞬間、Sさんの名前と顔写真がブラウン管に映し出された。

どっひャァァァ〜!!  その顔は間違いなくSさんだった。

Sさん捕獲されちゃったよ!  

おいおい、マジですかってな感じ。

ベンツ蹴っても勘弁してくれたSさんは心優しい人だったんだけど、警察は謝っても勘弁してくれない。「謝って済むなら警察いらん」とはよく言ったもんだ....


そんな理由で、Sさんに断わろうにも、直接断われなくなってしまった。

Sさんには悪いが、私にしてみたら、これってラッキー。

何もかにもが上手くいくと逆に恐ろしくなったりする。

こんな私に日常トラブルはつきものだけど元気に暮らしているから偉い!

正義の味方!  ?

 

たつ人生の教訓として】
1、ヤクザさんも人間だ、正直に謝れば済むこともある。
2、謝って済むなら警察いらん。(まさにそのとおり)
3、とりあえず逃げ足だけは速いにこしたことないが、ヤクザさんから逃げようなんざ甘い。
4、恐い方の車は蹴ってはいけない。

5、大人になって全力疾走はしたくないね。 (^_^;)


毎度ためになる教訓ですねぇ〜

日常生活において、いつかあなたの役にたつ(?)

クワバラクワバラ......

 

 

では、「たつの言いたい放題」を自己中心的に書き綴るものである。もくじへ戻る 表紙へ戻る


余談:あの時の1km全力疾走は、命がかかっとったもんで、めちゃ早かったなぁ!
記録より記憶ってやつだろうな! (調子に乗り過ぎたらアカン) すんません。