■お前ら張った押すぞ!
5月の終わり、取引きしている天神のとある会社事務所(ビル)へ大事な打ち合わせをしに行くことになった。
昼1時からの打ち合わせなので、お昼のランチを食べ終わったビジネスマンやOLさんに混じりながらビジネス街を歩いていた。
会社事務所のビルの手前の横断歩道を渡ろうとしたら青信号が点滅しだしたので、普段なら「車を止めても行ったるばい」となるんだけど、誰が見とるか分からんもんで大人しく信号待ちをしていた。そして、何気にフっと上を見上げると、7階のガラス窓に顔見知りの美人秘書さん2人が、私の方向を見ながら両手で手を振っていた。
あ・あ・あ・あ・・・・・
最悪なケースだ!
それと言うのも、私も手を振って「ワ〜イ」とコミュニュケーションしてみたい気はするが、歩道には約30人からのビジネスマンやOLさん達が居る訳で、ランチ帰りの会社の先輩や同僚に手を振っている確率の方が高く私じゃないかも知れない。
しかし、なんとなく私に手を振っているようにしか見えない。
手を振ろうか、振るまいか、こんな時は、一体、ど・ど・どうしたらいいんだと悩む。
もし、私じゃなく間違って手を振ったなら....
100%そう思われるであろうと恐怖をよぎるのである。
大恥じ者にならん為には見て見らんふりで立っているしかないが、美人秘書さんと完全に目と目は合っていて、一旦気が付いてるのに正々堂々を掲げている私が、手を振っている秘書さんを無視するって訳にもいかんのだ。
私は歩道に居る約30人をキョロキョロ見渡した。
別段、ビルを見上げて女性秘書さんに手を振っているビジネスマンやOLさんはおらんので、手を振ってみようかとした。
ん?ん?ちょいと待った!待った!
逆に言えば、その人が気づかないからこそ手を振っているという仮説も成り立つな...
おぉ〜危ないとこやった、間一髪セーフじゃ!
私の脳ミソは最善の方法を見つけ出そうとフル回転するのである。
ここはどっちでも受け取れるように、反町隆史が表情で挨拶するのを真似して、私も顔だけでカッコつけてみようかと一瞬考えてはみたものの、私のキャラクターではなく、もしもそんなことすると、
う〜ん、それも絶対嫌だな。またまた恐怖がよぎる...
信号が青になるまでまだ1分はる。どうしよう、どうしよう。
信号待ちで、おとっつぁんピンチに陥る!
こうなったら、私に手を振っているのかどうかを確認してから手を振っても遅くはない!
私は、右手の人差し指を立て、自分の鼻を指しながら「え?私なの?」とジェスチャーをしてみた。(これが私らしい)
すると「ふむふむ」とうなずきながら大笑いしている秘書2人。
やっぱり私だったのか! はっはっはっは...
よしよし、可愛い秘書さんたちに手を振ってやらないとな。
横断歩道で人が沢山いて少し恥ずかしいけど、清水の舞台から飛び降りたと思って、上空を見上げて満面の笑みを浮かべながら、両手で思いっきり手を振っちゃおぉ〜ワ〜イ、ワーイ、ワーイ \(^O^)/\(^O^)/\(^O^)/
そうしたら、秘書2人は慌てて隠れてしまった。
あれ?
何で隠れるんやろ?(まだ手を振っている私)\(^O^)/?
あれぇぇぇ〜???
なんとなく気まずくなり、横や後ろからものすごい視線を浴びているのが分かったので、満面の笑みのまま振り向くと、ビジネスマンやOLさんらは、おもいっきり目を広げ1歩下がっていくのだ! それは、客観的にみて、誰もいない空に向かって、オッサンが大きく手を振っているわけで、頭のおかしい変質者か変態には近寄らんめぇという風に見れる。
満面の笑みだった私は、一瞬にして凍り付く! ホンゲェェ〜
ものすごく冷たい視線。私の顔は完全にひきつっていた。
私は、ど・ど・どうリアクションしたらいいんだ?
すると、♪通りゃんせ〜通りゃんせ〜こ〜こはど〜この細道じゃ〜 と横断歩道から音楽が流れ青信号に変わったもんだから、みんな私を横目で見ながら足早に通り過ぎて行く。
おい、お前らちょっと待て。 俺の話を聞いてから行け!
「いや、その、あのね、向こうのビルに知人がおってね、手を振られたから、手を振って返してただけなんだけど、手を振っていた2人が、いま席を外したから、それで、いま、ひとりぼっち、なの、わかる?」
ってなことをと声を大にして弁明したいが、そんな暇などありゃせんのじゃ〜
みんな待っとくれぇ〜(たつ心の叫び)
ビルを見上げても秘書は居ない。
完全に、ひとり取り残されたオレ。
こんな恥ずかしい思いをしたのは始めてだ!
私は顔が真っ赤になりながらも、ビルに入りエレベーターで7階へ、そして事務所へ入ると秘書さんが言った。
秘書:「いや〜もぉ、おもいっきり恥ずかしかったぁ」
拙者:「なん言いよると、こっちが恥ずかしいやん」
秘書:「こっち向いて手を振らなくても...」 (-_-;)
拙者:「どうしたら良かったん?」
秘書:「それじゃ、お茶入れてきます」 (-_-;)プン
拙者:「・・・・」
コラコラコラ、ちょっと待たんかい!
悩んで悩んで、悩んだあげく満面の笑みで手を振った私の気持ちがわかるか?
お前らが隠れるもんやけん、変態扱いされたやないか。
お前らが恥ずかしいって、こっちの台詞じゃいい加減にせぇ〜よ 。お前ら張った押すぞ!
そう言えたらどれだけ楽になれることか... チクショー
私が悪いのか?踏んだり蹴ったりじゃ〜 不完全燃焼の物語。
数分間の喜怒哀楽でしたが、書いたことで少しはスッキリできそうです。
ご清聴ありがとうございました。 (*^_^*) おわり。
「喜怒哀楽」では、「たつの言いたい放題」を自己中心的に書き綴るものである。もくじへ戻る 表紙へ戻る