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日常の喜怒哀楽を写真付きで綴るエッセイ

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そこまで掃除しますか

ある日のこと、30歳代ぐらいの声で男性のお客様から「洗濯機のビスが取れないのでビスを取って欲しい」とのご依頼があった。

どうして洗濯機のビスを取る必要があるのか?

ビスを取ってどうしようというのか?

という疑問が最初から出て来る。

普通なら「壊れたんですか?」とか「何かあったんですか?」と聞いてしまうのだろうが、私のように変わったご依頼を様々な形で請負っていく玄人になると、ビスを外すのが目的ではなく「じゃぁーコレもお願い」と”ついで”を装って全く違うことを依頼してくるパターンだなと考える。

こいった場合、余計なことは一切聞かず「それでは現場に行きます」と返答するのが正解だ。後は臨機応変。出たとこ勝負なのだ。

つい最近も仕事が終わって「ついでに手紙を書いて欲しい」と頼まれ代筆してきたばかりだ。この代筆はワープロ等で印字すると犯人探しが始まり自分も対象者の1人になってしまうことから、印字ではなく第三者の筆跡にして性別も変えることで対象外になれるというメリットがあるわけだ。

こういった代筆には「善い手紙」と「悪い手紙」の2つがあるが、それは人によって違ってくるので私の知ったことではない。本件は内部告発だった。

話を戻そう。

洗濯機のビス?とうものを外しに現場に到着すると、新築マンションの1室で30代後半の男性のお客様がエプロンをして私の到着を待っていた。

ん? なんか雰囲気が違うぞ...

お客様は私を洗面所へ案内し、これなんですけどねーと指差した。

そこには分解されている洗濯機があり「このビスが取れないので洗濯が出来ないんですよ」と言う。

私は目が点になってしまった!

そのビスとは洗濯機下部のドラムとモーターとを止めている8mmのボルト4本であり古い年式で鉄製のボルトを使用しているために錆びつき、パッと見るからにそう簡単に外れそうにない厄介な奴がガッチリはまっていた。

なぜこのビスをはずさなければいけないのか?ということよりも、本当に外れないビスだったことに私は驚いて目が点になってしまったのだった。

お客様に聞いてみると「ドラムを外して掃除しなければ気が済まない」といい、これまで半年に1度はドラムを外して掃除していたらしいのが、今回どうしてもボルトが外れず電話したとのこと。

気持ちはわかるけど、それを外してまで掃除する人は世界中にあんたしかおらんばいってツッコミたくなってしまう。ただこれもお仕事なので仕方ないなとボックスレンチを車に取りに行き洗濯ドラムを外すことができた。

お客様はドラムが外れると満足そうに「おーおーやっぱ汚れとったねー」と歯ブラシで細く擦り始めた。

あぁーよかった、よかった。 私の仕事はこれで終わり。

「ついでにコレも...」という依頼はなさそうなので「それでは帰ります」と言って代金を請求したら、ここで「あのぉー」というキーワードが口に出た。

やっぱりそう来たか!

お客様:あのぉー、組み立てるまで一緒に居てください。

ドッヒャー!

まぁ、そんなとこまで掃除をするなんて面白ろい人だし、そんな人なら次の仕事に繋がるかもと思ってOK出したらとても喜び、ドラムの裏を歯ブラシでゴシゴシしながら会話が始まった。

ただ、このお客様は喋ると歯ブラシ持った手が止まるのでドラムの掃除が終わらないのだ。

「お前なにやってんだ。さっさと掃除を終わらせろよバカ野郎」と言いたいけどそんなことは言えない。

10分、20分、30分と経過し、しょうもない話にウンザリしながら1時間半ぐらい経った時、外から奥さんが帰って来た。

これはチャンス!!

組み立てまで付き合ってられるかってんだい。

奥さんに代金を払ってもらって逃げるぞぉ!!

奥さんはちゃんと会話ができる方で、玄関口で「ウチの家事は旦那さんの仕事で家中をキレイにしてくれるのでとても助かっています」と笑っていました。

私は社交辞令で「良い旦那さんですね。僕なんか何もしませんもん。少しは見習いたいと思います」と返すと、歯ブラシ持った旦那さんが駆け寄って来て、私にこのような表情をした。

アメリ

わかったから、こっちに来んなよ。

さっさと戻ってドラム洗ってこい。("^_^")

潔癖性の人は多いですけど、ここまで掃除する人はヤヴァイです。

「摩訶不思議」は、昔し昔しの話しである。

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