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日常の喜怒哀楽を写真付きで綴るエッセイ

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五感にしみるゴミ

どうして週2回のゴミ捨て日に捨てないのか?と思うだろうが、そこには様々な事情が潜んでいる。

今回ご紹介する摩訶不思議な特殊なお客様は「ゴミが貯まってどうしてよいか分らなくなった」と相談してきた40歳代1人暮らしの女性である。

ご依頼の電話を受けてさっそく現場へ下見しに行きたいところだが、摩訶不思議なお客様はどんな車でどういう格好で来るかを質問し、自分に都合のよい様々な指定をしてくるという特徴がある。

そこまで考えられるのであれば、指定された週2回のゴミ収集日にゴミを捨てるなんて難しくもなんとも無いはずなんだが、このお客様はゴミを捨ててるところを近所の人に見られたくないという。

日時指定された日に現場へ行った。

まず玄関を開けると、臭い匂いが鼻をつき嗅覚がやられる。

ゴミの山々と黒青ピンクのカビが部屋を彩り視覚がやられる。

意味不明な言い訳するお客様のマシンガントークで聴覚がやられる。

異次元の物体に触り触覚がやられてしまう。

味覚は特にないが、とにかく吐きたくなる酷い部屋だった。

様々な経験をしてきた私はあまり驚かないのだが、今回のお客様は記事にするぐらい珍しく「五感にしみる」方であった。

作業を開始した私は先ずはスペースを確保しようとゴミの上を歩いていくとムニュッとしたカビの生えた菓子パンを踏んでしまい、更に片足はカップラーメンの汁やジュースが床に溢れているとは知らずに歩いてしまったことで、いきなり靴下がダメになってしまった。土足でいけば良かったと思うが後の祭りである。

オエェェェー

作業開始から数時間後、90リットルのゴミ袋で50袋を楽に超えトラックは山積み状態になった。作業全終了です。

作業代金もいただき最後の説明で「このゴミは明日の早朝、最終処分場(有料)で引き取ってもいます。有難うございました」とお礼を述べると、信じられないことにお客様は「ゴミは最後まで見届ける」と言い始めたのだ。

大切に保存し溜めていたゴミとお別れするのが辛いのだろうか?

私は「このゴミを開けたり利用したりしませんから」と説得したのだが「追加料金を払うから」と言われればこちらも商売。仕方なく了承した。

翌朝、お客様をお迎えに行き新たに4袋を追加して処分場へ....

車中でお客様は「私はストーカーに見張られていてゴミも怖くて捨てられない」と意味不明な言い訳する。

お客様のマシンガントークは止むことなく「近所の人が...ストーカーが...探偵が...警察が...不動産屋が...」と本気で私に訴えてくる。

仮にそうだったとしても、外にゴミを捨てられないのと部屋の中を掃除しないのというのは全く違うので聞き流すだけだった。(真剣に受け止めなくても聞くだけは聞くのが私の仕事だ)

30分後に処分場へ到着。

体育館の数倍ある穴の中へ放り投げて作業終了です。

お客様はとても満足していました。

しかし、最後にどうしても気になってしまうことが1つある。

お客様が最後に出した追加のゴミ袋なんだが、昨日までに全て出し尽くしていたにも関らず90リットルで4袋もどこから出てきたのだろうか。

重量もそこそこあった。

仮にこの袋の中に何らかの「死体」が入っていてももう誰も解らない。

やたら違和感を感じるし恐怖も感じる。

未だ「最後まで見届ける」との言葉と満足した表情が頭に引っ掛かっています。

廃棄物やゴミ関係の仕事は結構してきたが、処分場までついてきたのはこのお客様が始めてである。今回の作業が事件に関っていないことを祈ります。(1995年以前の話しです)

[達のひとこと]

テレビで「ゴミの家」や「ゴミ屋敷」などとして紹介されている家があるが、テレビで放送している家は見えている範囲がゴミで溢れているだけで大して凄いとは思わない。

本当に凄いというか危ないお客様は今回のような方なのだ。

「摩訶不思議」は、昔し昔しの話しである。

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