マネーの達
私の仕事では、いろいろな仕事依頼がある。
前話では、私が取立てする方を書いたが、取立てられる?方もあった。
昔の話しである(強調する)。
とある日、30歳位の女性から電話があった。
「ご相談がありますが40歳位の男性の救けが必要なんです」
「え~どういった救けが必要なんですか?」
「いや、40歳位の男性の声で電話に出てもらえればいいのです」
「はぁ、その電話とはなんでしょうか?」
「これから先は電話では詳しく話せませんが、おたくの声でいいです。とりあえず自宅まで来て下さい」
と暗い雰囲気なんだが、少々慌てた口調の電話を受けたのだった。
こういった場合、大半がヤバイ話しなのだが、儲かるのだ.....
やったぞ~手付け金ガッポリじゃ~などと獲らぬ狸の皮算用をしながら、早速お客様宅へ行った。
ここは最近できたと思われる豪華なライオンズマンションの一室
ピンポーンとチャイムを鳴らすと「よく来てくれました」とものすごく感謝されながら私は家の中へ入るのだった。
余談:一歩家の中へ入ると、何が起きるかわからないのでプロとして、それに対処できる心構えが必要とされる。
以前、オウム真理教全盛期の頃の話しだが、パソコン技術者が道場へ訪問サービスに行ったら、そのまま監禁し「マントラ」を2日間も大音量で聞かせ洗脳しようとした事件が福岡であった。
ちょいと脱線したが、この家では30歳位のケバイ感じの女性なだけで何も怪しくはなかった。コーヒーを出してテーブルに着くと、お客様は依頼内容を話し始めた。
実は私、旦那に内緒の借金が結婚前からたくさんありまして、今日が支払い期限なんですが、お金がないので金融屋さんにそう話すと「夕方に旦那と電話でいいから話しがしたい」と言って来たのです。
それで、旦那にバレると離婚されるから何とか旦那になりすましてもらって1週間だけ支払い期限の延長を金融屋にお願いしてください。との依頼である。
ガッハッハ
旦那になりすますだけの簡単な依頼ではないか!
一部分だけ聞かなかった事にすれば合法である。っと思った。
するとお客様は「これが重要なのですが、金融屋さんは必ず本人確認しますから、これをまず簡単に覚えてください!」っと直筆のレポート用紙3枚程度を出してきた。
それをパラッパラッと見てビビッてしまった!
そのレポート用紙には、勤務地、役職歴、会社電話番号、会社住所、会社社長名、上司の名前、部下の名前、車のナンバー、免許書番号、生年月日、出身校.....兄弟の名前住所から勤務地、義理の兄弟名...etc
百項目近くもある。
おいおい!
こんなことまで金融屋さんが聞くか?(疑)
簡単に覚えれる数じゃなかろうもん!(つっこみたくなった)
しかし、夕方(金融屋からの電話)までには時間があるので、覚えるふりして時間がたつのを待った.....仕事だし....
そして夕方、電話のベルが鳴った。
お客様が先にとり「主人に代わります」と言い私は話し始めた。
「◯◯です、今回は支払い期限に支払えず申し訳けありません」...etc(金融屋さんは50代の女性で感じがいい人だ)
来週には必ず......etc......などとある程度話していると、急に「本人確認させてください」と切り始めた。(ホォ~これか)
勤務地、役職歴、会社電話番号、会社住所、生年月日、出身校.....を次々に聞いてくるのだが、それはレポート用紙に書いてあるのでパーフェクトである!
お客様も、うん、うんとうなづき自信満々!
そして10項目以上を答えていると、お祖父様の名前は?
と聞いてきた。
ん! ん! ん! ん!
ん~ん! あれっ! ゲッ!
レポート用紙にはジイサンの名前なんて書いてないのだ。
お客様にすばやく走り書きで確認するが、お客様は首をかしげるのだ!(そんなの知らんとのジェスチャーである)
どないしよう...??
その間10秒....金融屋は「どうしたんですか?」と何度も言う。
せっぱつまるが、お客様は知らん顔する.....
えぇ~い! こうなったら、一かバチか!
私のオヤジの名前を言ってやる!
「信一です」と私は言った。
が、「残念ながら違います。ケンイチです」と冷たく金融屋に返されてしまった...
当然だが、そんなもんで一致する訳ないのだ!
あ~ぁゲームセットだ.......
「あなた本人じゃありませんね」
「・・・・・・・・・・・・・・」(その通りじゃ)冷汗...
しかし「信一」と「ケンイチ」は全然違うが非常に近かったなぁ。
近いのでダメかしらと言いたいが.....ハッハッハ
すると、今まで応対していた感じがいい50代の女性から40代の男性にかわり「お前は、誰や? おぉー」っと金融屋ならではのドス黒い声で私に話しかかてきたのだった。
完全にバレてる。
私はゲームセット!
もう話す事はないので仕方なくお客様にかわる。
当然だが金融屋から受話器ごしにかなり怒鳴られていた。
(可愛そうだが、仕方ないのだ)
お客様は5分くらい怒鳴られ続けていた末に電話を切った。
今回、私の仕事は失敗したが、成功しても失敗しても報酬を頂くのが商売のルールゆえに、可愛そうだが◯万円になりますと言うと....
客「◯万円は支払います。そのかわり◯◯万円を私に貸してください」
っと真剣に私に言ってくる!(マジで言っている...)
私「そんなこと出来ませんよ、私もお金ありませんもん」
客「幾らでもいいので貸して下さいお願いします」
私「そんなこと言われても・・・・・・・・・」
客「だって今から金融屋が家に来るんですよ」
私「・・・・・」
(オイオイ! そりゃ~嘘ついた私もヤバイでしょ)
客「お願いします」
私「お金はいりません。帰らせてもらいます」
(早く帰らないとヤバイ)
と言い残し玄関口に急いで行き、靴を手で持ったままエレベーターも使わずに(密室の空間で金融屋と会う可能生もある)
私はスンゴイ早さで階段をかけ降りお客様のマンションから飛び出すのであった。
獲らぬ狸の皮算用と儲けの企みから「飛んで火に入る夏の虫」になるところやった。
前話も今話も同様に....
私の仕事が希望金額に達っしませんでしたので、ノーマネーでフェニッシュです。(マネーの虎より)
結局、最後には笑えるが現場はかなり緊迫していた事は言うまでもない!
余談:金融屋の質問事項だが、このお客様(嘘つき&ブラック)に限っては詳細な質問をしてくることがあるようだ!事実...
このお客様性懲りもなく2週間後にも依頼をしてきた。
それは、また別な話しとして今後につづく......
「摩訶不思議」は、昔し昔しの話しである。