手作り家具工房 陽寛 編
この部屋にテーブルを置こうと、あっちこっちの家具屋さん(ざっと15店舗以上)を回り天板の色やサイズを検討してみたんだが、私の思っているイメージとはなんか違うなってことで数カ月もの時間だけが流れていった。
で、「一体、私はどんなものを何を求めているのか?」とよ~く考えてみたら、基本となるものが住宅用の家具ではなくてお店にあるようなテーブルだったのだ。
あっ! そうだ!
私が30年以上も使っているテーブルがあるじゃないか! 90cm×45cm
傷だらけなので、これを綺麗にしてやればイメージどうりなのだ!
よっしゃ! 修復だ!
っとは思ったものの、中高校生の頃から共に生きて来た私にとってはとても大切なテーブル。
もし、修復に失敗したら「大切な想い出」を壊してしまうし、2度と日の目を浴びないどころか後悔の念で一生を過ごさないかんごとなる。
そうならん為には、プロに修復して貰うしかない。
私は写真を撮ってお友達の陽寛(家具工房 陽寛:ようかん)さんへメールを送ってみた。
すると、「テーブルの端が盛り上がっているので機械で削るわけにはいかないし、枠は無垢だけど天板自体は合板のようだから地道にサンドパーパー掛けをするしかありません。どうしても淵は手作業になるので費用も時間もかかります。サイズも小さいし(たっちゃんなら)自分で出来るよ。頑張ってみたら?」ってなお返事をいただいた。
まず、気になったのは天板自体は合板?
そんな訳けないだろうと思い天板の裏を見てみたら... ゲゲッ,ホントだ!
30年以上使ってきて始めて知ったわ。(上の写真で合板だと見抜ける陽寛さん。やっぱプロは凄いなとつくづく思った)
まっ、手作り家具の職人さんに合板を修復してもらうのも気が引けるんで、自分でやった方が安いってことは明白だ。
しかし、こんな安っぽいテーブルでも私の想い出がぎっしり詰まっているので失敗覚悟でやる気にはどうしてもなれない。
それから陽寛さんとは何度もメールのやりとりで相談させてもらっていたのだが、最後の最後にメール貼付で写真を送りました。
自分で何とかしようとなると...
失敗したくないです。(;´Д`) たつ
メールではずっと真面目な話をしていたのですが、最後の最後にスペイン・ボルハの教会の柱に描かれた120年前のフレスコ画の修復写真。
多分笑っていただいたのだと思います。
「とりあえず、持って来てみてください」とのお返事....
やったぁー!
■2012年10月27日(土)
相方と福岡県糸島市の家具工房陽寛までテーブルを持ち込んでみました。
陽寛:ちょいとサンドパーパーで削ってみますか。
陽寛:やっぱり無垢枠の塗装剥くのは大変。枠だけで数日かかるやろうね。
陽寛:天板(合板部分)は電動サンダーで削っていくので楽なんやけどなー
陽寛:こんな感じで地道にやっていくんですよ。
たつ:ほんと申し訳けないです。
陽寛:ところで たっちゃん。思い入れのあるこのテーブルは何に使いよったと?
たつ:中学、高校と俺の勉強机やったっちゃん。← 本当です
陽寛:えぇ? これで勉強しよったと?
たつ:凄いでしょうー
陽寛:よくこれで勉強できたねぇー
たつ:うん。だから馬鹿でしょ。← 客観的にみても本当
陽寛:はっはっはっはっは....
たつ:はっはっはっはっは....
相方:はっはっはっはっは....
陽寛:ものすごくいいネタやね。
たつ:それだけに思い入れがあるとです。
陽寛:なるほどね。
たつ:修復よろしくお願いいたします。
陽寛:わかりました。
そして修復作業が始まりました。
少しして、休憩しに3人で工房の展示室へ
数々の作品が展示されている展示室。
電気好きな私はどうしても照明に目が行きます。
無垢だけでなく、古いミシン(鉄)とのコラボもしているんだなー
木目が生かされていて綺麗だし、値段も高そうだなーって見てると...
相方が身も蓋もないことを平然と言った。
相方:あんたのテーブルが如何にオンボロで安っぽいかがよ~くわかる。
たつ:そげん言うな。俺には価値があるとじぇ~
陽寛:思い入れは大事やもんね。はっはっはっは...
相方:でも、オンボロには違いないやん。(強い口調)
たつ:オンボロでも修復すれば綺麗になるっちゃけん。
相方:大体、陽寛さんに合板を修復してもらうのが間違いやん。
陽寛:いや、いや、いや、大丈夫ですよ。 ^_^!l|
相方:もう、30年の思い入れは捨てりぃーよ。
たつ:大概のものは捨てて来とるやないか。(`e´)怒!!
相方:じゃー、テーブルも捨てりぃーよ。
たつ:いいや、捨てん。
相方:それじゃ、このミシンとどっちが上ね?
たつ:それとこれとは話が違うけど、陽寛さんの方が上に決まっとるやんか。
相方:これから30年、思い入れを上書きしていったらいいやんね。
たつ:(うるせぇーな)でもミシンはいらん。
しばらく、このようなやりとりが続く...
陽寛:まー、まー、まー、まー (仲裁)
大きさもあまり変わらんし、そしたら(2人の間をとって)実際にこの天板をあのフレームに乗せてみたらいいちゃない?
今から外してみるけん、どうるすかそれからでよかやない?
相方:すいませんがお願いします。
たつ:無言(なんか納得いかん)
陽寛さんは工房から電ドラを持って来て天板を外し始めました。
そして、工房で実際に重ねてみました。
サイズもほぼ同じだし、ちゃんと重ねてみると半端じゃない重厚感がある。
あぁぁぁぁ... なんてことだ。 _| ̄|◯
前話のタイルカーペット編でも同様に「良いものは確かに良い」のだ。
ただ、私の大切な思い入れが無くなってしまうのは苦痛なのだ。
私は頭を抱え込み、崩れるようにその場に1人座り込んでしまった。
相方:あんた、これでよ~とわかったやろ?
たつ:無言(言葉がでない)
相方:お別れしなさい。
たつ:嫌だ。自分のイメージしている色とイマイチ違うっちゃん。
相方:暗くしたら中心の木目が綺麗に出らんごとなるやろ。ねぇー陽寛さん。
陽寛:そうですね。良い木目だけを真ん中にデザインしていますからねー
相方:ほらっ。あんたも本当は分っとるっちゃろうが!
たつ:無言(図星だ。しばらく、無言の状態が続く)
相方:それじゃ、いいね。
たつ:ちょっと待て。こいつを修復してからでも遅くないって...
相方:アンタ、またそげなことば言うてから。いい加減にしときいよ!
たつ:無言(言い逃れようとしていることは自分でもわかっている)
そんな時だった。陽寛さんがタイミングよくこう言った。
陽寛:この足(鉄部)をそのまま使えば。半分だけは思い入れが残らん?
相方:確かに。
たつ:そう言われればそうか。
さらに....
陽寛:サンドペーパーで塗装を剥がして、ほんのちょこーっとだけ色を濃く塗り直してやるけん。
相方:新品なのにいいと?
陽寛:(気持よく)いいよ。
おもいっきり背中を押してもらった私。
たつ:わかった。この天板とはキッパリお別れします。
相方:ご縁というものがちゃんとあるとよ。
陽寛:そうね。ここに来て同じサイズがあったのも縁やもんね。
たつ:自分でペーパー掛けして持って来たら縁があっても絶対に譲らんやった...ペーパー掛けしなかったのも、お別れするための縁やったんやろうかね。
相方:そう思う。
陽寛:そう思う。
そんなこんなで修復してもらいに来たんやけどもご縁あって天板を購入することになりました。
複雑な想いは今もある・・・・・・
この気持を表す言葉は見当たりません。(´Д`)ハァ...
最後になりますが、陽寛工房を出る時、私はこんな独り言をつぶやきました。
「もし、陽寛さんのテーブルで勉強しとったらもう少し成績が上がったろうやぁ~」と...
かなりウケました。
秀才が言うと嫌みに聞こえますが、私がこれを言ったらウケる訳です。
ここは笑うところですネ。(^_^;)
色の塗り直しをしてもらうので、出来上がりは1週間後の11月3日(土)です。
楽しみです!
2012年10月19日 記録